SKIMMER考察

30歳前後の人であれば、結成時からリアルタイムで聴いているだろうお馴染みのUK POP/MELODICパンクバンド。すでに日本ツアーは3回目行い、海外でもこれまでにNOFX、THE QUEERS、LAG WAGON、JAWBREAKER、Mr.T EXPERIENCE、ROCKET FROM THE CRYPT等といったバンドとツアーをし、今年結成15年目を迎える大ベテランバンド。でも前回の来日からすでに8年という歳月が経っており、このバンドのことをまだ知らない若い世代にも、ぜひ聴いてもらいたい。
今回、せっかくスペースを頂いたので、FOLLOW UP的にこのバンドの歴史をディスコグラフィーと共に遡ってみたいと思います。甘く切なくドキャッチーなポップパンクバンド。まさにフォエーバーセブンティーンってな歌詞は涙腺を緩ませ、もの悲しい感じもするけど、同時に、思いっきり希望の光が差し込んでくる、そんなサウンドを奏でる無敵なバンドです。
ついに8年振りの来日も決定し、あとは彼等がやってくるのを待つのみ!という、うれしすぎる現状です。バンド名はどこかで聴いたことがあるけど、まだ聴いたことがないって人は、ぜひ聴いて欲しい。そして、その目でライブを見て欲しい!正味な話、リリースした曲全曲捨て曲なし!
バンド結成は1993年にイギリスのバーミングガム。前身バンドであり今日まで続くUK POP PUNK/MELODIC PUNKサウンドの礎的な存在であるTHE SECTの主要メンバーだった、ケビン(ベース)とテリー(ギター)のパウエル兄弟が、当時テリーのルームメイトであったアダム(ギター)を誘い、オーディションでドラムにアンディを迎え結成。
そして最初に作製したデモ音源がRUGGER BUGGER DISCのショーン・タイラーの耳に留まり、SNUFFY SMILEのUKメロディックパンクの教科書的コンピ『BEST PUNK ROCK IN ENGLAND, MY SON』に「ALL THE TIME IN THE WORLD」(大名曲!1stアルバムにバージョン違いで収録)が収録されたことにより、日本でも密かに話題になり始める。
そして、94年に待望の単独の1st 7″シングル『BETTER THAN BEING ALONE』①をリリース。ドキドキしながらタイトル曲の塩化ビニール盤の溝に針を落とした瞬間、幕を開ける単弦ギターでガツンとやられ、上下に動く伸びのあるメロディーを切ない声で歌うケビン、そして、そこにさらに哀愁を増長させるきれいなコーラスワークがかぶさる。これでもかって位のポップサウンドの応酬に、一気に昇天させられました。後期THE SECTの延長線上にあるサウンドで一気に、日本の多くのポップパンクファンをノックアウトさせてくれた。歌詞も号泣極まりない内容。
実際に、このシングルの評判はすごく良く、後のSNUFFY SMILEからのリリースやアメリカでのリリースに結びついたそうだ。同時にこの7″シングルをリリースしたレーベル・CRACKLE!も、一気に注目を浴びることになる。
翌95年には、大名曲「STAY YOUNG」を収録した2ndシングルとなる7″『HAPPY』②をリリース、立て続けに今度はSNUFFY SMILEからSAMANTHA’S FAVORITEとのSPLIT③もリリース。また情報としては、この時期の音源としてはSmiteen Fanzine #4に付録としてつけられたWACTとのSPLITフレキシがありますが、収録曲は2nd EPに収録されている「SMITTEN」。
96年5月に初来日ツアーを大成功(実際に、生で彼等の曲を聴いた人の中には泣いてしまう人もいたんですよ!)に終えた彼等は、同年に3rdシングルとなる『ALL I KNOW IS WRONG』④、アメリカのレーベルから4thシングル『BORED AGAIN』⑤、5thシングル『UNCOOL』⑥と連発して7″シングルをリリースし、バンドとして最高にいい時期であったことかが伺えるような雰囲気を感じ取れるアップテンポな曲調に仕上がっている。
そして98年2月に二度目となる来日をCRACKLEの盟友CHOPPERと果たし、最早この時期の彼等は鉄板というくらいの勢いで、ツアーも本当に大盛況で終了しました。また同年10月には盟友とも言えるNAVELを彼等の国に呼びイギリスツアーをサポート。この年のリリースも凄まじく、まずは、これまでの7″シングルを収録した編集盤CD『COMPITOENAIL』⑦をCRACKLE!とSNUFFY SMILEからリリースし、そして待ちに待ったフルアルバム「VEXED」⑧をリリース。これがプレス上のミスからCD、LP共に買わなきゃいけなくなったが、ファンとしてはうれしいプレスミスが発生。元々はLPだけにボーナストラックとして盟友CHOPPERの名曲「NOT PERFECT」収録予定だったんです。なので当然LPを買うわけです。そしたらCDには予測していなかったボーナストラックが5曲も収録されていました。もちろんプレスミスなので、クレジットは一切なしで。あれ?まじで?これ曲多い。。。そしたら、この5曲は未完成のデモトラックや、後にシングルやコンピ参加時のために録音されていた音源を一緒にマスターに入れていたために発生した奇跡の出来事だっていうんだから。もちろん両フォーマット買わなきゃいけなくなっても、ファンに取っては死ぬほどうれしい内容ですけどね。
また、NAVELの来英に合わせツアー用のSPLIT 7″をCRACKLE!とSNUFFY SMILEで別内容⑨、⑩でリリース。しかも1曲は両方のシングルに収録されていますが、その曲が、なんと前身バンドTHE SECTの「SUMMER GIRL」のカバーで、ファンの度肝を抜いてくれました。
99年は6th 7″シングル『TUFFY CLUB』⑪をリリース。ここでもいつもの普遍の珠玉のメロディーで健在っぷりをアピールし、翌年の2000年に3度目の来日ツアーを果たし、今回は東名阪だけでなく西は九州までと足を運びます。
それから彼等はリリースは控えライブに専念すること3年。そして2002年2ndアルバム『STILL』⑫をリリース。これまでリリースを連発していた彼等だけに待たされた感が強かった。けれど、その期待を裏切らない内容です。1stアルバムはミッドテンポの曲がメインでぐいぐいと引っ張っていきメロディーを聴かせるといった内容でしたが、こちらは1曲目からアップテンポで疾走感溢れまくりの内容です。個人的に大好きな「MAKING SENSE OF IT ALL」で、リリース当時悶絶した記憶があります。
ここまではメンバーチェンジなしで、リリースも順調に活動を続けてきた彼等ですが、2004年夏には3rdアルバムのレコーディングを完了させ、後はミックス作業をして2005年初旬にはリリースも決まっていた矢先に、活動を停止せざるを得ない事件が起きてしまうのです。8月にオリジナルドラマーだったアンディが交通事故により突然この世を去ってしまった。結成当時から一緒だったメンバーのこの事件により、心にぽっかりと穴があいてしまったのです。同年10月にBBCでのJOHN PEEL SESSIONの誘いが来た彼等はヘルプドラマーでなんとか出演を果たしましたが、その後は後任のドラマーが決定しないまま活動が出来ない状況に。
ようやく後任のドラマーにウォレンが決定し、アルバムのミックス作業をなんとか完了するものの、今度はレーベルのCRACKLE!が一時的に活動停止に。。。その後、イギリス国内、アイルランドをツアーするも、せっかくレコーディングしたアルバム用の音源のリリースは宙に浮いたままに。
2007年に入りそのアルバムのリリースレーベルがイギリス、ヨーロッパはBOSS TUNEAGE、日本はWATERSLIDEからと決定し、めでたく3年越しにリリースされることになりました。このアルバムが『I’LL TELL YOU WHAT』⑬です。手前味噌ですみませんが、3年前の音源とは思えないほど、色褪せていない珠玉のポップチューンの連発です。アンディの追悼となる作品に参加できたことをスタッフ一同リリースが決まった時は感動しました。レーベルをやっていて最高にうれしかったです。運命に感謝します。
話はこの作品に戻りますが、2000年の来日以来、彼等を取り巻くイギリス国内の状況をストレートに表現した「SHIMOKITAZAWA HIGH」で伺えることが出来ます。この歌詞は、今までの彼等の曲になかった彼等の当時のシーンでの悩みが出ている楽曲だと思います。
昨年はアルバムリリース後にTHE SECTの奇跡のディスコグラフィーと、THE SECT時代の盟友JASON率いるIDENTITYのディスコグラフィーをリリースしたMAKE THE CONNECTIONから、6曲収録の久々のシングルとなる『SHE’S A SEMINAL』⑭をリリース。続いて12月に、これまでに紹介した7″シングル、SPLITシングル、1stフルアルバムを全部まとめた『SMITTEN』⑮をめでたく復活を遂げたCRACKLE!からリリース。
簡単ではありますが、これがここまでの彼等の歴史とディスコグラフィーです。しかーし、話はここで終わりません、この原稿を書いている現時点で、彼等から届いたメールによるとニューアルバム『SELF HARMONY』⑯のレコーディングが完了したようです。と、いうことは、日本ツアーにはもしかすると、最新音源のリリースが間に合うかもです!!!ぜひとも、今回の来日ツアーを見にきてください。また、ライブで絶対に聴きたい曲があったらケビンにメールを書いてください。とてつもなくフレンドリーで良い人で、絶対に返信してくれるので恥ずかしがらずに!

(この文章はFOLLOW UP2008年4月号に掲載されたものです)

↑ SKIMMERの練習スタジオにて(2009年7月)

p.s. SKIMMERは現在も精力的に活動しており、現在、ニューアルバムのために新曲を作っている状況です。恐らく2010年にはリリースされるのではないでしょうか。また来日ツアーに向けてお金も貯めてくれています。

最新音源としては2009年8月にリリースされたHER SPECTACLES、PEACE OF BREADとの3 WAY SPLIT CD⑰に新曲3曲を提供してくれています(2010年1月現在の情報)。